応援メッセージ

 研削加工に特化して、加工現場の課題を持つ来場者が、出展者と最新の技術・知識を挟んでディスカッションし、問題解決のヒントを掴んでいただく「課題解決型展示会」として企画がスタートした『Grinding Technology Japan 2019』。
 この新しい展示会への応援メッセージとして、研削加工分野をリードするキーパーソンの方々に、研削加工分野の現状と今後の展望、また「Grinding Technology Japan 2019」に期待する点などについて、お話をいただきました。

 第一回は、砥粒加工学会の会長であり、また研究者としてもナノ精度加工やパウダージェット加工など最先端の研究でこの分野を牽引する、東北大学の厨川教授です。

研削に特化した、メーカーとユーザーの「出会いの場」の誕生。大いに期待しています! 厨川 常元 氏

これからも、研削でなければ加工できない分野は必ずある

 これからの研削について考えてみますと、まず一つ言えることは、これまでも、またこれからも、「研削には絶対に他に負けない分野がある」ということ。研削に使われる砥粒というのは、その切れ刃の先端角はほぼ直線に近い160°と非常に特徴的で、切削方向前方に圧縮応力がかかるので、クラックが出ないんですね。たしかに昨今は何でも切削で、という動きもありますが、硬脆材料の加工など、研削でなければ加工できない分野は今後も必ずあるだろうと考えています。
 であるからこそ、研削技術も今後は医療やEVといった、動きのある分野に利用されていく可能性は大いにあるけれども、常にその材料に対して研削が向いているか否か、またどの分野でその優位性が活かせるかということは、当然ながらよく検討し、議論することが必要です。
 (形状精度、表面粗さなども含めて)図面どおりに形状ができていればよかった昔と違い、今はそれだけでは高付加価値は狙えません。となると、たとえば材料表面に凸凹を付け、撥水や無反射といった機能性を付加するなどは、非常に面白いところでしょう。小さい面積への処理であればプロセスはいくらでもありますが、現在強く求められている、小さな構造体を畳一畳分、ドラム缶大のロール金型等、非常に大面積に施すような要求に対しては、切削や研削の役割は非常に大きいと言えます。
 また研削技術も研究が進み、最近では1ナノ分解能の機械も珍しくありませんが、今後はさらにもう一桁小さい100ピコ分解能の加工法なども提唱され、メーカーもそれに追従してきています。そうなればさらに研削の可能性は広がっていきますが、一方で微細な切屑を出すメカニズムの解明や、砥石の開発なども必要になるでしょう。この場合、極微細の5000~7000番のダイヤモンド砥石を作ってくださいといっても、ただ単純に混ぜて作ることはできますが、本来必要不可欠になるであろう「砥粒が均一に分散し、しかも砥粒密度は非常にピークが経つような粒径分布をしている、均一分散分級砥石」のようなものはなかなかできません。そうした技術開発も必要になるだろうと考えます。

飛躍しすぎるくらい自由な発想で、研削技術の使い道を考えよう

 そしてそのような議論をする際には、ぜひ一度「研削のこの技術は、何か別のことに使えるんじゃないか」と、もう少し柔軟な発想で考えてみることも必要になると思います。どうも私には研削盤メーカーも“研削盤を製造する”ことだけを考えているように思えるのだけれど、今は加工手段のボーダーも徐々になくなってきた感があります。要は最終的に必要とする機能を持ったものができあがればいい、そして今はその中から、より新しい、高付加価値のものを生み出すことが求められていますから、今まで以上に技術の融合や転用は意識して考えていくべきだと思います。
 たとえば私も企業の方と、研削由来のブラスト技術を利用して、骨と同じ材料のハイドロキシアパタイトを歯の表面に噴射し製膜するという付加技術を開発しています。この技術はもともと「当てる石の数を精密制御できれば、ブラストも精密加工に使えるのではないか」と考え、微粒砥石をハンドリングする中から派生的に出てきた技術です。また他にも切削液、研削液がすぐ腐り異臭がするといった問題もより研究が進めば、その技術を今度は別の排水処理技術、さらには土壌の改質技術にまで発展するといったことが起きるかもしれません。やや飛躍しすぎかもしれませんが、研削技術の別分野への転用を考える上では、このくらい自由な発想があってもいいと思えるのです。

この新しい展示会を真にメーカー・ユーザーの共創の場に

 このように研削の未来を皆で考えていくべき時期に、「Grinding Technology Japan」という、研削に特化した、また小回りの効く展示会が、工作機械メーカーと砥石メーカー、また彼らのユーザーたる製品メーカーの「出会いの場」として生まれたことは、大いに期待し応援すべきだと考えています。ただし大いに期待するがゆえに、私なりの考えも述べておきたいと思います。
 高付加価値製品・技術を開発するため、今後は研削盤メーカー、砥石メーカー、そしてこれらを使うユーザーメーカーの三者の共創がますます必要になってくるわけですが、「必要ですよ」と言っているだけでは実は何も起こりません。つまりユーザーにしてみたら、当然ながら手の内はさらしたくない、何に使うかなんて言いたくもないでしょうから、そういう情報の共有はされにくいんですね。今は大学が仲人役となり、協力して技術を開発するなどしていますが、どこまでがオープンでどこまでがクローズなのか、その線引きは非常に難しい。ゆえに信頼関係が築けないうちから密な議論が始まるということは、到底考えにくいわけです。
 ですから、本展示会を「研削分野の課題解決型展示会」にしていこうというコンセプト自体は非常に面白いのですが、それをたった1回の展示会で実現できるというのは早計です。小回りの利く展示会を活かすには、“内容を密に”という以上に、“回数を密に”すること、つまり出会いの場を頻繁に持ち、何度も顔合わせをして地道に関係づくりを続けていく仕掛けづくりが大切です。それができれば、この展示会の存在意義は大いに高まっていくでしょう。
 そうした考えから砥粒加工学会でも、毎年開催している「先進テクノフェア」(ATF:Advanced Technology Fair)は従来の賛助会だけの会合から脱却し、今年から出展企業さんのお客さんとなるメーカーに来てもらうことにしました。しかしそれだけでは十分とは言えません。ぜひこの「Grinding Technology Japan」も、たとえば展示会とつながるような形で、それ以外の時でも小さなミーティングや勉強会が多く行われる、一連の「出会いの場」として仕上げていただけたらと思うのです。
 企業からすれば、社内はどうしても外部の情報は得にくい環境になりますから、リカレント教育の機会などあれば大いに歓迎するところでしょう。すでにそのような準備も進めていただいているようですが、砥粒加工学会でも新しい動きを模索していますので、ぜひこの機会に足並みを揃えていただき、また研削分野の皆様にも支えていただいて、この新しい展示会を真に価値あるメーカー・ユーザーの共創の場にしていければと考えています。

(厨川先生へのインタビューより 構成:「機械と工具」編集部 大喜 康之)