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ドイツ「GrindTe c」に感じた研削専門展の魅力と大いなる可能性

古巣である上智大学のものづくり教育・研究支援施設「テクノセンター」にて

普段の展示会とは違う気づきを与えてくれた「専門展」

 日本初の研削専門の展示会「Grinding Technology Japan 2019」は、ドイツの「GrindTec」が企画立案のベースになったと聞いています。実は私も2018年に初めて「GrindTec」に訪れる機会を得まして、専門展の面白さに非常に興味を持った者の一人です。
 ドイツのGrindTecについては、多くの人から「独創的な機械が多いし、EMOなどでは出展しないようなメーカーも出展している」と聞いていました。実際に訪れてみますと、たしかに普段の展示会ではお目にかからないようなメーカーも多数出展されており、とても魅力的な内容でした。また見る側の心持ちとして、少なくとも私の場合は“総合展とはかなり違う見方をした”ことを、強く実感したのです。
 幅広い分野をカバーする、EMO、IMTS、JIMTOFなどの総合展の場合、「できるだけ多くのものを見よう」「やはり切削を中心に見ておこう」と思う人が多いと思います。しかし専門展の場合には、出展物は研削分野に限られますから、研削に関するあらゆるものを、自らの抱える問題を意識しながらじっくり見ることができます。私自身、ドイツの「GrindTec」では、ノズルの形状や研削液の供給法・浄化法(新しいメカニズムで浄化する装置がどんどん出てきている)、ポンプなどについて多くの発見をしました。「今年は研削盤がどうなったのか」といった動向に加えて、より良い研削加工システムをどう実現すべきか、たとえば「研削加工用CAM、研削液供給方法、砥石、チャック、計測装置なども考えなければいけないんだ」など、普段とは違う気づきを与えてくれたように思います。
 研削に限らず、加工は機械だけ良ければ良い物ができるのではなく、周辺装置なども含めたシステムとしての最適化が重要です。このような価値感が関係者で共有できれば、こうした専門展が日本にも根付いていき、大きな力になるだろうと感じました。

ドイツで進む独創的開発と、ユーザー・メーカーの関係

 そうした、ドイツの「GrindTec」で得た気づきの中から、一つ私なりの感想・問題提起を述べるとしますと、やはり日本と欧州のメーカーでは、商品開発の方向性や、ユーザー・メーカー間の関係が全然違うように感じます(詳しくは図解などが必要なため、会期中のセミナーで解説したいと思います)。
 日本では円筒研削・平面研削ともに、従来どおりの構造形態にNCがついて精度が上がって、ということが今も行われている感がありますが、欧州では独創的な構造形態、加工や機能の複合化を実現するために、モジュラー設計法が非常に進んでおり、それらを組み合わせてユーザーの要求に応える構造形態の機械がどんどん作られています。砥石台に内研・外研軸を装着するのは当たり前で、外研砥石を水平位置まで旋回できるようにして、ねじ研削からスプライン研削までできてしまう機械など、さまざまな複合加工機能を縦横に実現しています。単純に前後するトラバースやプランジカットの単能機などは、もはやほとんど展示がないという印象です。
 また自動化についても、「単にロボットを搭載して自動化してみた」のではなく、「システムとしてどうすれば生産性が上がるのか」を真摯に考え、全体最適を意識した自動化が進められているように感じました。
 欧州でなぜこうした取り組みが進むかといえば、メーカー側が現場のニーズをしっかり掴んでいるのか、あるいは現場からのさまざまな要求がメーカーにしっかり届けられているのか、私はおそらくその両方だと思いますね。本当に「現場でこうしたいよ」という声に「わかった!」と応えるような形で、ニーズに合った製品が出てきます。考えてみますと切削分野における5軸加工機なども、最初にどこでその有用性が評価され広まったかと言えば、やはりそれは欧州で徹底的に使いこなされてから、日本やアメリカへと広まりました。つまり、欧州ではユーザーが装置を徹底的に評価し、要望を伝えて、メーカーをしっかりと動かしているように思います。だから新しいものも次々生まれるし、他国のユーザーから「○○○社の機械を入れています」といった形でユーザー自身の宣伝にも利用されるほどクオリティの高いブランドとなり、メーカー自身も育っていく、というわけです。
 この点については、今後業界としてもよく考えていくべきだと思っていますが、その背景には欧州でこうした専門展がしっかりと定着し、議論の場として機能したことも、大いに関係しているように思えるのです。


上智大学の ものづくり教育・研究支援施設「テクノセンター」

「総合展の小型版」ではない、専門展の魅力を引き出すために

 そこで、こうした専門展を生かすためには、日本のユーザー、メーカー、主催者、それに学を加えて、お互いの意識を少し変えて臨む必要があるように思います。
 海外ではユーザーは、メーカーにより具体的な相談をしているように思いますし、またメーカーも、展示会場では技術から営業まで、誰もが自社技術に精通しており、色々と技術的質問をしても、非常に丁寧に回答してくれるように感じております。一方日本では相談しようにも「私は営業ですので、ちょっと技術のもの呼んできます」といわれることが多く、営業スタッフの勉強不足が感じられます.営業・技術部門で、新製品の技術内容をしっかり共有して、顧客にその場で、技術として伝えたい内容をしっかり伝えながら、顧客のニーズを吸い上げることが重要と思います。このあたりは、ぜひ今後考えていく必要があるように思います。
 一方主催者側からは、この展示会はJIMTOFなど総合展の小型版ではなく、全く違う発想で業界を盛り上げ、課題解決を図っていく、ある意味「研削加工の祭典」のようなものにしていければ、とのお話がありました。そしてその実現に当たって、業界大手を含む複数の企業が率先して参加を表明し、ご意見なども寄せていただいたと聞いています。各企業に業界をまとめ、引っ張っていく意思が生まれてきているというのはうれしく思いますし、時にはお父さんが子ども連れで参加してもらえるようなイベント、人材育成に役立つイベントもあったりと、業界の将来の持続的発展も意識した、自由な発想があってもいいように思います。
 さらには、今まで展示会に出てきていないような企業、独創的な砥石のドレッシング装置やセンターを製作している会社などで、「うちは展示会なんてとてもとても・・・」と言われてしまうような企業にこそ、出展してもらうことが大切です。そのために、たとえば人数50名以下の企業は割安で出展して頂き、小間の作り方もサポートするなど、出展者、来場者、主催者、そして研究者にとって、展示会の価値をより高める、他の展示会では見られないような斬新な仕組みも、主催者側にはぜひ考えていただきたいと思います。
 規模的にはまだまだ小さな展示会ですから、自由な発想や判断の迅速さは大きな強みになるでしょう。こうした魅力ある展示会をみんなで育てていく中から、業界が一丸となって物事を考え、オールジャパンで海外と戦っていくきっかけなども生まれればと考えています。

(清水先生へのインタビューより構成/「機械と工具」編集部 大喜 康之)