応援メッセージ

ユーザーの視点から、参加者すべてが課題解決し合える展示会を目指したい 髙井 作 氏

工具再研削の認知度向上を図る「切削フォーラム21」

 我々工具の再研削業者が集まって、1999年から「切削フォーラム21」という任意団体を設立しています。
我々の団体は、研削についてはユーザー的な位置づけとなりますが、今回始まった研削技術の専門展「Grinding Technology Japan 2019」では“特別協賛”という形で、ユーザーの視点を活かして企画・運営にも協力させていただいております。
さて、我々の切削フォーラム21も、当初は43社で立ち上げたのですが、現在の参加企業は104社まで増え、20年経ってやっとここまで大きくなってきた感があります。
実は設立前にも数回にわたり、いろいろな業界団体の方をお呼びして「刃研シンポジウム」という会合を行っていたんです。ですが我々の考える切削工具研削への思いというものを、やはり単発ではなく継続的な活動にしたいということもあり、会組織とすることにしました。
今では再研削に対する研究も進み、非常に要求も厳しくなり、新品と同様あるいは新品以上に切れることが求められるような時代になりました。しかしその頃はまだ「切削工具再研削」というものが社会的に認知されておらず、「切れなくなった刃物の研ぎ直し」程度の位置づけでした。ですから技術も集大成といったものはなく、大学で再研削の学術的な研究なども全く行われていない状況でした。
しかし再研削とは言うなれば、部品を安定した品質で作り続けるための技術です。日本のものづくりの技術的底上げを考えた場合に、そこに注目がされてないことに非常に危機感を持ちまして、工具再研削の社会的・技術的な認知度向上、それによる業界の刺激、日本のものづくりの品質向上などを目的として、この会を始めたというわけです。

 とはいえ、それぞれがコンペティターという集まりですから、皆さん最初は「どんな会なんだ」と戦々恐々としていましたね。当然ながら最初は誰もが「情報はもらうけど出さない」というスタンスだったのですが、名刺交換からある程度話をするようになってくると、やっぱり皆さん抱えてる問題や、工具再研削の閉塞的な状況、日本の工業の置かれた立場への懸念というのは同じなんだと、分かってくるわけです。そこで、まずは再研削に関する技術研修から始めました。標準品の工具を、いかにお客様にあった刃先形状にするか考える、そしてそのための技術的な問題に真剣に向き合う中で、だんだんと気心も知れ、交流も生まれてきたのです。

ライバルから仲間へ

 そんな中、あるメンバーの方から、欧州には「FDPW」という非常に大きな再研削団体があることを聞きました。「それなら欧州研修をしようじゃないか!」ということになりまして、2002年に切削フォーラム21のメンバー十数名が、FDPWの主催する「GrindTec2002」を見学しました。
 ヨーロッパの再研削業界はどのようなものか、レベルがどの程度のものかということを学ぶのが目的でしたが、それだけではなくあらゆる面で、大変大きな刺激を受けました。それが今回日本での「Grinding Technology Japan 2019」開催を、切削フォーラム21からも働きかけた大きな要因となっています。
 日本では今までに研削の専門展というのは行われていませんでした。それ以前に、「切削」に比べて「研削」という言葉自体もあまり一般的とはいえません。最終的な品質を大きく左右する技術であるにもかかわらず、そこに陽の目があまり当たっていなかった、という状況は確かにあると思います。ドイツの展示会ももともとは切削工具のほか、登山用のナイフやバンドソー、チェーンソーの再研削装置など、いろいろなものが混在する総合展でしたが、今はすっかり工具研削の専門展になりました。
 そしてこのドイツの展示会「GrindTec」も、当然ながら日本と同じくコンペティターの集まりだったわけですが、それにもかかわらず展示会が終わった会場では、なんといろいろな企業のメンバーが即興のジャズバンドを組んで演奏し、そんな中で皆さんすっかり打ち解けて飲んでいるんです! 我々もご招待いただいたお礼に、日本で練習していった覚えたてのドイツ語で「リリー・マルレーン」を10人ほどで合唱しましたが、それでもうすっかり仲間というわけです。普段はコンペティターではありますが、一旦そのような交流関係が生まれると、皆さん非常に仲間意識が強いんですね。ドイツのグラインドテックは「ライバルから仲間へ」いう考え方がはっきりと見えた展示会だと感じました。
 日ごろコンペティターという関係だと、なかなか交流というのも難しいと考えてしまいますが、実際このように交流を実現できた展示会もありますし、我々も切削フォーラム21の中で、そういった雪解けを体験しました。ですからそういう意味では交流も無理だとは決して思いませんし、まずは今回出展したメンバー同士が仲良くなる、「“日本で初めての研削の専門展”に、一番最初に出展/参加したんだ」という意気込みといったものを共有して、今後につなげる、皆で伸びていく、また日本の研削、また工業の課題を解決していくという流れになっていくといいと思います。まだ小さい展示会ですから、参加者の顔と顔とが分かり合える、そんな展示会にできるのではないかと思っています。

集客よりも、中身の濃い議論の場に

 そのほかに、ドイツの展示会でどのような点が参考になったかといえば、まず驚いたのが、たとえ小さな企業でも、展示には力を入れてしっかり見せるよう、主催者側が非常に指導や配慮を徹底しているということです。
 実は切削フォーラム21の出展も一度指導を受けたことがあるのですが、主催者側が展示の仕方、インテリアやロゴの統一性といったことをしっかり考え、アドバイスするんですね。ですからまるで銀座の一流店で宝石を並べてあるように、ガラスケースの中にダイヤモンド砥石がキラキラとディスプレイされていたりするのです。これはやっぱりセンスのいいものになりますよね!出展する側は展示に関するノウハウはないので、プロの方にいろいろご指導いただいて、一般的な展示会と少し違った雰囲気が出せれば、私は展示会のステータス向上にもつながるのではないかと思っています。

 そしてもう一つ、日本の展示会の場合、ただ単に集客の数を競い、煽るようなところも少し感じられますから、どうしても総花的なものになる傾向がありますね。そうなると90%くらいの来場者は、通過してそれきりということにもなるわけです。
 その点ドイツの展示会は、刃物のほかに、砥石、油、ツーリングなど、来場者が具体的な技術課題を持参して、これをぶつけてみようと思って会場を回っているわけですよ。ですから迎える企業の側も、展示スペースより広い商談スペースを確保していたり、ただ聞かれたら答えるというのではなく、しっかりと人員を出して、その場でしっかり課題解決のための議論をしようとしています。ですからこの展示会も集客よりむしろ、そういう中身の濃い、本当にお互いに課題解決し合えるような展示会を目指して欲しいと思いますね。

学術的な領域と、現場を繋ぐものにできたら・・・

そして最後に大事なのは「しっかりと学術的な部分を押さえた展示会にする」ということです。
 もともと我々が切削フォーラム21としてスタートしたのも、部品の品質に大きく関わる工具に注目が集まっていない、という状況に不安を感じたことが一つのきっかけでしたが、それは研削についても同じこと。やはり砥石の重要性を感じますが、その点ドイツの展示会ではしっかりと、研削の品質を左右するものとして砥石が脚光を浴びており、好感が持てました。
 そして品質を追求するならば、ただ単に形状、寸法が出ていれば良いというわけではありませんから、たとえばワークの機能性表面や内部応力の解明といった、学術的な領域にまで議論を発展させていくことが大切です。本展示会も、そうした学術的な部分と現場を繋ぐものにできたらと考えています。
 もちろん砥石だけではなく、各種研削盤やホーニング、ラップ、磨き関係、微細加工などそれぞれに学術的に掘り下げるべき部分がありますし、測定器なども重要なテーマの一つだろうと思います。
 切削工具の分野の話になりますが、昔「型研サロン」というものがありまして、それぞれがサンプルなどを持ち寄って、技術コンサルタントの先生を中心に問題解決を考える場がありました。たとえば熱処理なども、実際どういう現象が起こっているのかというメカニズムを解明しつつ、非常に学術的な、しかしそれでいて加工をするなら当然知っておくべき内容を、我々のところにまで非常に分かりやすく下ろしてくれるんです。また自分の技術を日本中に広め、みんなで高めていこうという気概を持った、視野の広い方も多かった。ですからそれが、日本の技術力の底上げに非常に大きな貢献をしたと思うのです。
 そういう意味ではしっかりと大学の先生や技術者の方々にもご協力をいただいて、学会とはまた違った現場的な視点から、技術について議論できる場にしていけるといいですね。またこの展示会では砥粒加工学会が全面的に支援を行ってくれていますが、今は数ミクロンの取り代を取る高速切削なども、研削と領域が重なってきていますので、たとえば精密工学会であるとか、測定、材料関係、または応用分野のほうの学会など、今後いろいろな学会にもご協力をいただくと、面白いものになるような気がします。
 もっとも、あまり学術寄りの展示会になりすぎても、逆に面白みがなくなってしまいます。そこで実務経験を生かして、いろいろな味付けをしていく、そのあたりに我々「切削フォーラム21」の役割があると思っています。

(高井氏へのインタビューより構成/「機械と工具」編集部 大喜 康之)